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高松高等裁判所 平成7年(ラ)25号 決定 1995年11月02日

①事件抗告人②事件相手方

城尾滋

國金暁美

川西清美

①事件相手方②事件抗告人

城尾卓

右代理人弁護士

高田憲一

藤澤和裕

①事件相手方②事件相手方

城尾宏

主文

一  原審判を取り消す。

二  本件を徳島家庭裁判所に差し戻す。

理由

一  本件各即時抗告の趣旨及び理由は、別紙即時抗告申立書記載のとおりである。

二  平成七年(ラ)第二五号事件について

1  抗告人城尾滋、同國金暁美及び同川西清美の抗告理由のうち、原審判が代償金の支払時期の定めを脱漏しているとの主張については、代償金の弁済期は、特別の定めのない場合は、遺産分割審判の確定と同時に即時に到来するものであり、原審判が代償金の支払時期の定めを脱漏しているものとはいえないから、右主張は理由がない。

2  右抗告人らの抗告理由のうち、原審判が、被相続人城尾サダの遺産である不動産を相続人城尾卓の単独取得としたうえで代償金の支払いを命じる分割方法をとった点が不当であるとの主張について判断する。代償分割は、現物分割が相当でない事由があることのほかに、遺産を取得する相続人に代償金支払能力があることを要する。しかるに、本件においては、一件記録によれば、原審判が相続人城尾卓に単独取得させることとした原審判添付遺産目録2記載の土地は遺産分割時の価格が一億円を超えるものであり、同相続人に負担を命じられた代償金の額も総額で五〇〇〇万円を超えるものであって、同相続人がこの土地を保有したままで代償金を支払う資力のないことは明らかであるところ、このような分割方法をとることについては、右抗告人らは、円満に代償金の支払いを受けられる見込みがないとして反対しており、また、相続人城尾卓も、代償金の支払いのためには、単独取得した右土地を売却せざるを得ず、売却に伴う税金の負担を考えると手元にはほとんど財産が残らなくなるとして強く反対し、原審判に対し、即時抗告をする。このような事情の下で、原審判が、右のような分割方法を採用したことは不当なものといわざるを得ない。

三  平成七年(ラ)第二六号事件について

1  抗告人城尾卓の抗告理由のうち、原審判が、被相続人城尾花一の遺産について同抗告人の寄与分を認めなかったことが不当であると主張する点については、一件記録を精査しても、同抗告人が同被相続人の財産の維持または増加につき特別の寄与をしたものとは認められないから、右主張は理由がない。

2  右抗告人の抗告理由のうち、原審判が遺産の評価を誤っていると主張する点について検討する。原審判は、原審判添付遺産目録3の(1)の番号9記載の土地(登記簿上の面積は三六四九平方メートル)及び同10記載の土地(登記簿上の面積は七七〇平方メートル)について、両土地をあわせて一〇一万五〇〇〇円と判断した。しかし、一件記録によれば、同番号10記載の土地は四国縦貫自動車道の用地にかかることから、既に、道路公団が、実測面積139.44平方メートルとして一平方メートル当たり二八五〇円の割合により三二四万七四〇四円で買収することを提示しており、同額以上の額で買収されることが確実となっていることが認められるから、右両土地の遺産分割時の価格をあわせて一〇一万五〇〇〇円とした原審判の判断は不当と言わざるをえない。

3  右抗告人の抗告理由のうち、原審判の遺産の分割方法が不当であるとの主張について判断する。同抗告人の主張のうち、被相続人城尾サダは原審判添付遺産目録2記載の土地を同抗告人に対して生前贈与していたから同土地は当然同抗告人の単独取得とし、代償金の支払いは命じるべきではないとの主張については、一件記録に照らしても右のような生前贈与の事実を認めることはできず、右主張は採用できない。次に、同抗告人には経済的な余裕は全くないので、右土地を同抗告人の単独取得とした上で合計五〇〇〇万円余の代償金の負担を命じられても、これを支払うことが不可能であり、仮に右土地を売却すれば多額の税金を支払わざるを得ず、このような分割方法は不当であるとの同抗告人の主張は、その限度で理由があるものというべきことは前示二の2のとおりである。

四  以上のとおり、原審判は、二の2、三の2・3に述べた点で不当であり、取消を免れない。そして、遺産の評価額及び分割方法につき更に審理を尽くさせる必要があるから、本件を徳島家庭裁判所に差し戻すこととし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官渡邊貢 裁判官西村則夫 裁判官豊澤佳弘)

別紙即時抗告申立書<省略>

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